給料が支給された時に発行される給与明細には控除、つまり天引きされている内容も記載されています。天引きされている内容について、よく分かっていない方もいるかもしれません。
本記事では、給料から天引きされたお金の内容について解説しています。

「去年より給料が少なくなってる」「よく分からないお金が引かれてる」という方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
給料から引いて良いとされるお金
給料の支払い金額について、労働基準法では以下のように定められています。
第二十四条
引用:e-GOV|労働基準法
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
一方で、法律により給料から天引きして良いとされているお金があります。引かれるお金は主に「税金」と「社会保険料」の2種類です。
これらは、給料から天引きされること(=控除)が義務付けられてるお金のため、従業員が引かれるのを望まなかったとしても控除を拒むことはできません。
なお、税金や社会保険料の金額は個人や家庭状況により異なります。次の章で、どのような税金や社会保険料が引かれるのか解説していきます。
退職月の給与が少ないと感じた場合は、以下の記事も参考にしてみてください。


引かれる主なお金一覧
以下、給料から引かれるお金の一覧です。
名称 | 内容 | |
税金 | 所得税 | 会社からもらう給料や、自分で商売をして稼いだお金などにかかる税金のこと。 |
住民税 | 住んでいる都道府県に納める税金のこと。住んでいる地域や所得により、納める金額が異なる。 | |
社会保険料 | 健康保険料 | 加入し保険証を提示することで、1~3割負担で医療機関を受診できる。 |
介護保険料 | 40歳以上になったときに納める保険料。介護が必要になった際に、各種サービスを受けることができる。 | |
厚生年金保険料 | 70歳未満の人が加入する保険。65歳以上になったとき年金として受け取ることができる。病気や怪我などで障害の状態になった際にも支給される。 | |
雇用保険料 | 失業や休業で働けなくなった際、生活の安定のために給付金などが支給される。 | |
その他 | 交通費、社宅費用など | - |
それぞれ解説していきます。
税金
給与からは所得税や社会保険料といった税金が天引きされます。以下、それぞれどういった内容の税金か解説します。
所得税
会社からもらう給料や、自分で商売をして稼いだお金などにかかる税金のことです。所得税の金額は、個人を取り巻く環境や扶養している家族などの状況により異なります。計算式は以下です。
<所得税の計算式>
(所得ー控除)×税率=所得税
控除の金額が高くなるほど、所得の金額が少なくなります。そのため、控除される金額が高いほど、所得税は少なくなります。
控除に含まれる例として、養っている家族がいる場合の「扶養控除」や、配偶者がいる場合の「配偶者控除」などがあります。
住民税
1月1日時点で住所がある都道府県・市町村に納める税金のことです。基本的に全員が納める必要があります。
ただし、「前年まで親の扶養に入っていた学生で、今年から新卒として働き始めた人」など場合、その年の住民税は払う必要がありません。社会人2年目から住民税も引かれるようになるのが一般的です。
会社が手続きしていないなどにより、毎月の給料から天引き(=特別徴収)されず、別途自分で納める必要があるケースもあります。自分で納める(=普通徴収)場合は、送付される払込書で支払います。
自分で納める場合は6月、8月、10月、翌年1月の計4回のタイミングで納付するか、6月に1年分を一括で支払うか選ぶことができます。
退職月により、住民税の納付方法が以下のように変わります。
■1月1日~5月31日の間に退職する場合
会社を退職する際に、最後の給与または退職金から一括で残りの住民税を天引きしてもらうことになります。
例)4月や5月に退職:4月の場合は4月と5月の2カ月分を、5月の場合は5月分のみ給与から天引きされる
■6月1日~12月31日に退職する場合
以下の3つから選べる
➀退職時に最後の給与or退職金から、一括で残りの住民税(翌年の5月まで支払う分)を天引きしてもらう
②会社に自分で納める旨を伝え、あとで送られてくる住民税納付書で払う
③転職先で天引きしてもらうよう伝える
社会保険料
社会保険料にはどういった内容のものが含まれるか、以下解説します。なお、実際にかかる金額については以下の記事で詳しく解説しています。


健康保険料
健康保険料は、国民全員が加入して納めなければならない保険料です。保険料は、会社で働く人であれば会社と折半となり、自身の負担分(5割)は毎月の給与から天引きされます。
この保険料を支払うことで会社から健康保険証が配布されます。保険証を提示することで、医療費の自己負担が3割に抑えられます。



夫や妻の扶養に入っている場合、扶養している人(夫や妻)が保険料をまとめて支払うため、扶養されている人の給料からは天引きされません。
また、健康保険の中には、介護保険というものがあります。介護保険料は満40歳(40歳になる誕生日の前日)から納める必要がある保険料です。健康保険料と合わせて徴収されます。
介護保険料を納めることにより、将来介護が必要になった際に各種サービス(介護施設サービスや福祉用具貸与など)を受けることができる。
厚生年金保険料
厚生年金保険は、厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤めている70歳未満の会社員・公務員が加入する公的年金制度です。原則として65歳以上になったときに受け取る事ができます。
老後の年金だけでなく、病気や怪我で障害が残ったときの障害年金、受給者が亡くなった場合に遺族へ支給される遺族年金などいくつかの種類があり、働けなくなったり収入を得ることが困難となった場合にももらうことができます。
雇用保険料
雇用保険料とは、失業時などに備えて支払う保険料のことです。雇用保険と労災保険をあわせて「労働保険」と呼び、国が運営しています。
この保険に入っている、かつ条件を満たすことで、仕事を辞めた際に次の仕事を見つけるまでの期間にもらえる「失業手当」を受けることができます。
失業保険については、以下の記事で詳しく解説しています。


雇用保険料は、会社と従業員の両方が負担しますが、会社の方が多く支払います。一方、労災保険料は会社が全額負担するため、給与明細には記載されません。
保険料率は業種によって異なり、農業・建設業などは毎月の給与の0.7%、それ以外の一般企業に勤める人は0.6%の負担額と定められています。
社宅にお住まいの方は社宅費が給与から天引きされるなど、個別の状況に応じて控除が発生する場合があります。
まとめ


給料から天引きされるのは基本的に税金と社会保険料です。税金は所得税と住民税、社会保険料は健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料が天引きされます。
また、社宅に住んでいる場合は、社宅費用などが天引きの対象となる場合があります。
給料から何のために税金や保険料引かれ、どのように役立っているか理解することで、自分が支払わなければならないお金を把握する事ができます。給与明細をチェックする癖をつけると、より理解が深まります。



この記事を参考にしても「よく分からないお金が引かれている」という時は、会社に給与の内訳を確認してみるとよいでしょう。
参考文献
TOKYOはたらくネット2-4.給料からは何が引かれるの
財務省|所得税について教えてください。
全国健康保険協会|介護保険制度と介護保険料について